ゲームの効果音はどうやって作るのか。

「効果音って買うもの?それとも自分で作れる?」と疑問に思っているゲーム開発者は多い。答えは両方あり得るが、自分で作れると表現の幅が段違いに広がる。ゲーム音楽制作15年、効果音制作も含めてワンストップで納品してきた僕が、実際の制作フローを全部話す。

効果音は大きく2種類に分かれる

まず効果音の種類を整理する。制作アプローチが根本的に違うからだ。

  • リアル系:剣の斬撃・パンチ・足音・爆発など。物理的な動きや衝撃を表現するもの
  • UI・電子系(SFX):メニュー操作音・アイテム取得音・レベルアップ音など。電子的・抽象的な音

リアル系は録音素材を加工して作る。UI・電子系はシンセで合成して作る。この2つでアプローチが全く異なる。

リアル系は自分で録音した素材が武器になる

リアル系の効果音制作の核心は素材ライブラリを自分で録音して持っておくことだ。

僕が録音しているのはこういった素材だ。

  • 金属がぶつかる音(アルミパイプ・鉄クズなど)
  • 金属を擦る音
  • タオルを叩く音
  • 棒を振った音

一見地味な素材だが、加工次第でどんな音にも化ける。自分で録音した素材は他の誰も持っていないオリジナル音源になる。これが市販のサウンドライブラリとの差別化になる。

録音環境はそこまで凝らなくていい。静かな部屋とコンデンサーマイク、オーディオインターフェースがあれば始められる。

野外の環境音などを録音したい場合はハンディレコーダーを使う。知り合いのサウンドクリエイターが「コンパクトでプロクオリティに耐え得る」と勧めていたので迷わず買ったZOOMのH6を使用している。常に側に置いておいて、ボタン一つで手軽に素材録音ができる。音のクオリティも申し分無く加工・無加工でも耐え得る素材収録ができて今も満足している。

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パンチ音の作り方【具体的な制作フロー】

実際にパンチの効果音を作る流れを例に説明する。

① woosh素材を録音する
マイクの前で棒・ハンガー・箸などを振ると、「ブン!」という風切り音が録れる。これがパンチの空気感を作る素材になる。

② RX7でクリーニングする
録音した素材はそのまま使えないことが多い。マイクに空気が当たりすぎて低音域が大きすぎたり、振る瞬間のグリップノイズが入ったりする。RX7で余計な雑音を除去して「ブン!」だけを残す。

③ 擦り音素材を加える
タオルやジーンズを素早く擦った「シュッ!」という素材を録音する。これもRX7で欲しい部分だけを残す。「ブン!」と「シュッ!」を重ねると風切り音がリアルになる。

④ 打撃音を加える
ジーンズを手で殴った「パン!」を録音してRX7でクリーニングする。EQで中音域から低音域を少し強調して、ディストーションをかける。これでパンチが当たったときの衝撃感が出る。

⑤ ピッチを下げたレイヤーを重ねる
完成した音と同じ素材のピッチを下げたものを、音量を小さくして重ねる。これだけでグッと迫力が増す。ほぼ毎回やる工程だ。

UI・電子系SFXはシンセで合成する

UI音やSFX系は録音素材を使わず、シンセで直接合成する。

シンプルなUI音はLogic Pro付属のRetro Synthでほぼ対応できる。シンプルな波形とエンベロープの組み合わせで、クリック音・通知音・カーソル音などが作れる。

レイヤーの多い豪華な印象が欲しいときはAlchemyOmnisphereを使う。この2つがあれば、どんなプロジェクトでもほぼ対応できる。

  • Alchemy:Logic Pro付属。テクスチャー・パッド・SFX系のプリセットが優秀
  • Omnisphere:サードパーティ音源の中でもSFX系の音色が特に豊富。汎用性が高い

シンセ合成の基本はエンベロープのコントロールだ。アタック・ディケイ・サステイン・リリースを調整するだけで、同じ音色でも印象が全く変わる。UI音はアタックを速く・リリースを短くするのが基本だ。

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RX7は効果音制作に必須のツール

iZotope RX7は録音素材のクリーニングに欠かせないツールだ。

効果音制作での主な使い方はこの3つ。

  • ノイズ除去:録音環境のノイズ・エアコンの音・マイクの自己雑音を除去する
  • クリップ修復:録音レベルが高すぎて歪んだ部分を修復する
  • 不要部分のカット:欲しい音の前後に入った雑音・グリップノイズを除去する

録音素材をそのまま使おうとすると、ノイズや不要な音が混入して完成品のクオリティが下がる。RX7を通すことで素材の質が上がり、その後の加工も精度が高くなる。

まとめ

ゲーム効果音制作の基本をまとめる。

  1. リアル系は自分で録音した素材ライブラリが武器になる
  2. 録音素材はRX7でクリーニングしてから使う
  3. 複数の素材をレイヤーして、ピッチ違いを重ねると迫力が増す
  4. UI・電子系はRetro Synth・Alchemy・Omnisphereで合成する
  5. エンベロープのコントロールが音の印象を決める

まず手近なもので録音してみてほしい。棒を振るだけでも、加工次第でゲームで使える素材になる。

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