「どうやって曲を作っているんですか?」
coconalaでBGM制作を受注していると、たまに聞かれる質問です。
この記事では、依頼を受けてから納品するまでの僕の実際のワークフローを全部公開します。
ゲーム音楽制作15年・coconala評価5.0の現役作曲家がどんな順番で、何を考えながら作っているか。DTMを始めたばかりの人にも、副業で音楽制作を始めたい人にも参考になれば嬉しいです。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
依頼内容の読み解き方
受注後にまず行うのが、依頼内容の読み解きです。
coconalaの場合、購入時のメッセージでゲームのジャンル・シーン・雰囲気・尺・ループの有無などを確認します。
ここで特に重要なのが「シーン」と「雰囲気」の2つ。
- シーン:どの場面で流れる曲か(例:フィールド・戦闘・ボス・タイトル・エンディング)
- 雰囲気:どんな感情を想起させたいか(例:緊張感・切なさ・壮大さ・日常感・コミカル)
この2つが明確になるほど、制作の方向性がブレなくなります。
逆にここが曖昧なまま作り始めると修正が増える原因になります。依頼内容が漠然としている場合は追加質問で確認してから進めます。
リファレンス曲の分析
依頼内容を把握したら、リファレンス曲の分析に入ります。
リファレンスとは「こういう雰囲気にしたい」という参考曲のことです。クライアントから指定される場合と、自分で探す場合があります。
分析で確認するのは主に3つ。
BPM
Logic ProのBPMカウンタープラグインでテンポを把握します。制作前にテンポ感を揃えておくだけで納品後の修正が大幅に減ります。
楽器編成
どの楽器が主役か、どんな音色が使われているかを確認します。「ストリングスメイン」「シンセ多め」など大まかな方向性を掴むだけでOKです。
雰囲気・構成
曲の展開、盛り上がりのタイミング、静と動のバランスを確認します。完コピする必要はなく、「空気感を借りる」くらいの意識で聴きます。
サウンドデザインから始める
リファレンス分析が終わったら、いきなりメロディを作るのではなくまずサウンドデザインから入ります。
音色が決まると楽曲の雰囲気が決まる。これが僕のワークフローの核心です。
依頼時に「悲しげなストリングスがあるといい」「和楽器を入れてほしい」といった楽器の要望が入ることも多いです。その場合はその音色を最初に立ち上げて、鳴らしながらイメージを固めていきます。
Logic Proの場合、まずAlchemyやStudio Stringsなど純正音源のプリセットをざっと試します。「この音だ」と思えるものが見つかった瞬間に曲の方向性が一気に決まることが多いです。
サードパーティ音源を使う場合も基本的な進め方は同じです。音色探しに時間をかけすぎず、「7割合ってればOK」くらいで次の工程に進むのがコツです。
骨格を作る
サウンドが決まったら骨格を作ります。
骨格とはリズム・コード進行・曲構成の大まかな枠組みのことです。
まずリズムから入ります。
短いモチーフでリズムパターンを作って、「これだ」という手応えが出たらそこにコードを乗せて広げていきます。リズムが決まると曲のグルーヴが決まるので、ここに一番時間をかけます。
コード進行は最初シンプルでいいです。
3〜4コードの進行から始めてリズムと合わせながら調整します。複雑にするのは後でいい。シンプルであるほど修正しやすいです。
最後に曲の構成を決めます。
イントロ・Aメロ・サビ・エンディングなど大まかな流れを先に決めておくとメロディを作るときに迷いが減ります。ループが必要な場合はこの段階でループポイントも意識しておきます。
メロディ制作のこだわり
骨格が決まったらメロディを乗せていきます。
僕がメロディ制作で常に意識しているのは「何度聴いても飽きない」ということです。
ゲームボーイやスーファミ時代の音楽が何十年も人の記憶に残り続けているように、1回聴いて良い曲より100回聴いても良い曲を目指しています。
そのために意識していること。
音数を絞る
音が多ければいいわけではないです。余白があるから印象に残るメロディになる。最初に作ったメロディから音を引き算していく作業を必ずやります。
動きすぎない
動きが多いメロディは最初の数回は新鮮でも繰り返すうちに疲れてきます。特にループするゲームBGMではそれが顕著に出ます。シンプルな動きの中に一箇所だけ印象的なフレーズを入れるくらいのバランスが好きです。
プレイヤー視点を忘れない
メロディを作るとき、主人公の感情だけでなくコントローラーを握るプレイヤーの心地よさも意識します。長時間流れるBGMほどプレイヤーへの配慮が大事になります。
試聴音源の提出と修正対応
メロディまで完成したら試聴音源を提出します。
僕の場合、試聴音源はほぼ完成品相当のクオリティで出すようにしています。
「デモ」のような作り込みが甘い状態で出すと2つのリスクがあります。
1つ目は、その後のブラッシュアップ工程をクライアントが過度に期待しすぎること。2つ目は、完成度が低い状態を聴かれることで「この曲、良くないな」という印象を与えてしまうこと。
初めてのクライアントには「あとはミックスバランスの調整等の仕上げ工程を残すくらいです」と一言添えて提出することもあります。
修正依頼が来た場合は大きく2種類。
- 方向性の修正:雰囲気・ジャンルがズレている場合 → 依頼内容の読み解きに戻って認識のズレがなかったか確認します。
- 細部の修正:テンポ・音量・楽器の差し替えなど → 素直に対応します。
納品前の最終チェック
修正対応が完了したら納品前の最終チェックです。
ループチェック
ループが必要な曲は繰り返し再生したときにつなぎ目が不自然でないか確認します。何度か連続再生して違和感がなければOKです。
音量・ラウドネス
納品前に全体の音量を確認します。基準はINTEGRATED LOUDNESSでゲーム用途は-18〜-16LUFS前後、映像用途は-14〜-12LUFS前後が目安です。クライアントから指定がある場合はその数値に合わせます。
ファイル形式
基本的な納品形式はWAV(48kHz/24bit)です。ただしクライアントによってMP3指定や44.1kHz指定の場合もあるので依頼内容を必ず再確認します。
ファイル名
クライアントによって命名規則が異なります。指定がある場合はそれに従い、ない場合は自分なりのルールでわかりやすい名前をつけます。
まとめ
依頼から納品までのワークフローをまとめます。
- 依頼内容の読み解き(シーン・雰囲気の確認)
- リファレンス曲の分析(BPM・楽器編成・雰囲気)
- サウンドデザイン(音色で楽曲の雰囲気を決める)
- 骨格を作る(リズム→コード→構成の順)
- メロディ制作(飽きない・疲れない曲を目指す)
- 試聴音源の提出(ほぼ完成品相当で出す)
- 納品前の最終チェック(ループ・音量・ファイル形式)
このワークフローに正解はないですが、15年かけて自分なりに最適化してきた流れです。
DTMを始めたばかりの人は全部を一度にやろうとせず、まず自分のやりやすい順番を見つけることから始めてみてください。




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