新しい機材より、今ある機材を使いこなす方が絶対に良い理由

新しい機材が欲しくなる気持ち、すごくわかる。でも正直に言うと、過去の自分はそこで何度も時間を費やしてきた。振り返って今はこう思う。新しい機材を買い集める時間より、今ある機材を使いこなす時間に費やした方が、確実にアウトプットが上がる。

この記事の目次(クリックでジャンプ)

新しい機材を買い集めたくなる心理

新しいプラグインや機材には、わかりやすい魔力がある。

「これを使えば、今できないことができるようになる」という期待感だ。デモを聴いて、レビューを読んで、セール価格を見た瞬間に買ってしまう。その瞬間は、確かに気持ちがいい。

この感覚の正体は、たぶん「成長への渇望」だと思う。

制作に行き詰まっていたり、自分のサウンドに満足できていない時、人は外側に答えを求める。「今の機材じゃ限界がある」「あのプラグインさえあれば」という思考になる。新しい機材を買うことで、問題が解決する気がする。前進している感覚が得られる。

でも、これは「道具を増やすこと」と「制作が上手くなること」を混同している。

新しい機材を買う行為は、成長の代替行動になりやすい。手を動かさずに、買うことで前進した気分になれるからだ。ブラックフライデーのセールで大量購入して、なんとなく充実感を覚えた経験、DTMerなら一度はあるんじゃないか。

使いこなすことが後回しになる理由

買った後に使いこなせない理由も、だいたい決まっている。

ひとつは、学習コストだ。新しいプラグインをちゃんと使えるようになるには、時間がかかる。マニュアルを読んで、試して、失敗して、また試す。パラメーターの意味を理解して、自分の制作に組み込めるまでには、数時間から数十時間かかることもある。

その過程が面倒で、結局さわりだけ触って終わる。「あとでちゃんと使おう」と思ったまま、次のセールが来る。

もうひとつは、すぐに次が気になることだ。

使いこなす前に、また別の機材の情報が目に入る。YouTubeのレビュー動画、Twitterの投稿、フォーラムの話題。そちらに意識が向いて、今あるものへの興味が薄れる。これを繰り返すと、使いこなせていない機材だけが増えていく。

そして気づけば、「買ったけど使ってないプラグイン」のフォルダーが育っている。

「持ってるけど使ってないプラグイン、結構ある」と以前の記事に書いた。あれは自戒の記事でもある。

使いこなすことに時間を費やした方が良い、具体的なメリット

ひとつの機材を深く使いこなすと、他の機材への理解も速くなる。

たとえばコンプレッサーの動作原理を体で覚えると、別のコンプを触ったときに「このアタックはこう動くはず」という仮説が立てられる。道具への深い理解が、別の道具への応用力になる。これは機材だけじゃなく、シンセ、EQ、リバーブ全部に言えることだ。

次に、制作の判断が速くなる。

「このシーンにはこのプラグイン」「この音にはこのEQの動き」という引き出しができるから、悩む時間が減る。選択肢が少ない分、集中できる。結果として制作のスピードと質が上がる。

そして、自分のサウンドが定まってくる。

多くの機材をつまみ食いしていると、サウンドが定まらない。毎回違うプラグインを使って、毎回違う質感になる。一方で、決まった機材を使い込んでいくと、そのツールの特性を活かした「自分らしいサウンド」が生まれてくる。

これは、長く使ってきたLogic純正プラグインで感じてきたことだ。高価なサードパーティ製に飛びつかなくても、使い込んだ道具は確実に応えてくれる。

新しい機材を10個買うより、今ある機材を10倍使いこなす方が、アウトプットに直結する。言い過ぎかな?いや、10倍使いこなしたらそりゃあアウトプット良くなるさ。

過去の自分への反省

振り返ると、セールのたびにプラグインを買っていた時期がある。

「いつか使う」と思って買ったものが、ほぼそのまま眠っている。使いこなせていないのに、また新しいものを探していた。制作の悩みを、機材購入で解決しようとしていたんだと思う。

当時の自分は、自覚がなかった。「これは投資だ」「プロはいい道具を使う」と正当化していた。でも実際は、使いこなす時間を後回しにしていただけだった。

本当に必要だったのは、今あるもので試行錯誤する時間だった。

Logic純正のプラグインだけで作った楽曲が、クライアントに高評価をもらった経験がある。その時に「道具の問題じゃなかった」と気づいた。機材のせいにしていたのは、自分が向き合う時間をとっていなかっただけだ。

今後の心構え

新しい機材を買う前に、一度立ち止まるようにしている。

「今あるもので、本当にできないのか」を確認する。たいていの場合、今あるもので何とかなる。「このプラグインじゃないとこの音が出ない」という状況は、実はほとんどない。

それでもどうしても必要だと判断したときだけ、買う。その判断は、使いこなした経験があるからこそ精度が上がる。使い込んでいない状態では「必要かどうか」すら正確に判断できない。

機材は増やすより、育てる感覚の方がたぶん正しい。

道具に育てられる、という感覚もある。ひとつの機材を長く使うと、その道具の癖や限界が見えてくる。限界が見えてはじめて「ここだけは別の道具が必要だ」という判断ができる。この順番が大事だと思う。

まとめ

  1. 新しい機材を買いたくなる心理の正体は「成長の代替行動」であることが多い
  2. 使いこなせない理由は、学習コストの高さと「次への興味」がほとんど
  3. ひとつを深く使いこなすと、他への応用力・制作スピード・自分のサウンドが定まってくる
  4. 「今あるもので本当にできないか」を確認してから買う習慣が判断精度を上げる
  5. 機材は増やすより育てる。道具の限界が見えてはじめて、次の判断ができる

新しい機材を買う前に、今あるものをもう少し使い込んでみる。その時間が、一番アウトプットに返ってくる。

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