ゲーム音楽つくるなら、効果音も作っちゃえよ

ゲーム音楽志望のDTMerに、たぶん一番伝えたいこと。効果音も作っちゃえよ。SE制作で身についた解像度は、確実に作曲にもミックスにも返ってくる。15年やってきて、これは確信に近い。「BGMの片手間」じゃなく、作曲家としての地力を育てる立派な技術領域だ。

ゲーム音楽つくるなら、効果音も作っちゃえよ

効果音作りって、地味な仕事に見えると思う。

BGMみたいに「楽曲」として完結するわけじゃない。短い音、断片的な音、用途限定の音。これを大量に作る作業を、なんとなく「BGMの下位互換」みたいに捉えてる人もいるかもしれない。

でも、これは大きな勘違いだ。

SE制作で身につく技術と感覚は、作曲・編曲・ミックス、全部に返ってくる。むしろ作曲だけやってる人にはない解像度が手に入る。これが他の作家との差別化に繋がる。

あと、面白い。

具体的に何が返ってくるのか、書いていく。

シンセでSEを作り続けると、音色のアタリが早くなる

僕は効果音制作で、シンセを使うことが多い。

始めた頃は、Logic純正のシンセやOmnisphereのプリセットを片っ端から試して、イメージに近いものを見つけたり「あ、これ使える」というのを集めて、調整してつくるみたいなやり方をしていた。

とにかく数を回す。プリセットを聴き続ける。

これを繰り返していろんなプロジェクトを経ていくうちに、こういうことが起きる。

「こういう音は、Retro Synthのノイズと、Sculptureのベルでいけそうだな」

みたいに、音色のアタリをつけるのが早くなる

そこから仕上げまでのシンセ操作も早くなる。手が覚えてる、というより「目的の音」と「シンセの操作」が直結する感覚に近い。

これがBGM制作にも返ってくる。

BGM依頼を受けて参考曲を聴いた時、シンセサウンドの解析スピードが上がる。「あ、これはこのシンセのこの系統の音」と即判別できる。再現度も再現スピードも上がる。

これは効果音制作で大量にプリセットを試した経験があったから身についた解像度だ。作曲だけやってたら、ここまで早くはならなかったと思う。

レイヤリングの感覚は、アレンジに直結する

効果音制作では、レイヤリングが当たり前の技術になる。

例えば、実際に録音した打撃音を作品に使う時。

  • ピッチを変えて重ねる
  • ディストーションをかけて質感を変える
  • 低域・中域・高域でそれぞれ別の音を仕込む
  • 位相をズラして広がりを作る

こういう操作を、SE制作では日常的にやる。1つの音を作るのに、5〜10レイヤー重ねることも普通だ。

この発想と技術は、BGM制作のアレンジにそのまま転用できる

キックの厚みを出したい時、ベースの存在感を作りたい時、シンセリードを目立たせたい時。SE制作で鍛えたレイヤリング感覚が、瞬時に判断材料になる。

結果、アレンジに使える引き出しが、短時間で増えていく。楽器の重ね方、テクスチャの作り方、空間の埋め方。SE制作はこれの修行になる。

オーディオ編集の精度が、ミックスのクオリティに返ってくる

これが、僕にとって一番大きいSEからの還元かもしれない。

SE制作では、大量のオーディオ編集をする。

  • ノイズ除去
  • フェードイン・フェードアウト処理
  • ボリュームの細かい調整
  • クリックノイズの削除
  • 波形の歪み補正

これを何百回、何千回と繰り返すうちに、オーディオ編集の精度が上がっていく。

そして、これが歌モノ制作や「歌ってみた」ミックス依頼を受けた時のボーカルトリートメントに直結する

特にRX(iZotope)を使った精細なトリートメントができるようになったのは、楽曲制作の経験もあるけど、それと同等かそれ以上に効果音制作で培ったオーディオ編集技術の影響が大きい

SE制作で「波形の細部を見て編集する」習慣がついていたから、ボーカルのリップノイズや息継ぎの処理も、迷わず手が動く。

この精細トリートメントのおかげで、「歌ってみた」ミックスの依頼に名指しでリピートしてくれるクライアントが今もいる。

SE制作からのこの還元は、当初まったく想像していなかった。「効果音作っただけで、なんで歌モノミックスが上手くなるの?」と言われそうだけど、地続きの技術なんだ。

「ノイズも効果音になる」という発想転換

SE制作をやっていると、独特な視点が身につく。

あらゆる音が選択肢になる、というマインドだ。

例えば、歌モノ楽曲のボーカル録音で出てしまった「プチ!」というクリップ音。これは普通、ノイズとして除去する対象だ。

でも、ホラー映像でこれを連続して使うとどうなるか。

ヒステリックで危機感迫る雰囲気が作れる

SE制作の現場では、こういう発想転換が日常的に起きる。「ノイズ」というラベルを外して、音そのものの質感で判断する。すると、楽曲制作で「除去すべき」とされていた音も、別の文脈では「使える素材」になる。

このマインドセットは、楽曲制作時の音選び・音作りにも大きく効いている。

「これは楽器じゃないから使えない」「これはノイズだから消す」という固定観念から自由になれる。こういう要素が、他のクリエイターには無い部分に繋がっていくんじゃないかと、僕は思っている。

ゲーム音楽志望なら、効果音もやっちゃえよ

最初に言ったことを、もう一度書く。

ゲーム音楽つくるなら、効果音も作っちゃえよ。

SE制作は、BGMの片手間じゃない。立派な技術領域で、しかも作曲家としての地力を育ててくれる

シンセ操作の解像度、レイヤリングの感覚、オーディオ編集の精度、音への発想転換。これらが全部、BGM制作に返ってくる。

ゲーム音楽の現場では、SEとBGM両方できる作家は強い。「分業」じゃなく「両輪」として捉える価値がある

そして何より、効果音作りは楽しい。短いから完成するのが早いし、楽曲じゃ使わない発想が試せるし、自分の引き出しが増えていく実感がある。

あと、面白い。

まとめ

  1. SE制作でシンセを大量に触ると、音色のアタリが早くなり、BGMの解析・再現スピードが上がる
  2. レイヤリングの感覚はアレンジにそのまま転用できる
  3. オーディオ編集の精度が上がり、ボーカルトリートメントなどミックス全般のクオリティに返ってくる
  4. 「ノイズも効果音になる」という発想転換が、音選び・音作りの自由度を上げる
  5. SEとBGMは「分業」じゃなく「両輪」として捉える価値がある

BGM制作で伸び悩みを感じてる人ほど、効果音作りに手を出してみるといい。地続きの技術が、思いがけない形で還元されてくる。

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