BGMを作る人間は、作業用BGMが聴けない

作業用BGMという文化がある。仕事中に音楽を流して集中する、あれ。便利なのは分かる。でも僕は、ほぼ流せない。BGMを作る人間は、作業用BGMが聴けない。職業病みたいなものかもしれない。

BGMを作る人間は、作業用BGMが聴けない

作業用BGMは、世の中で広く愛されている。集中力が上がる、リラックスできる、雑音をマスキングできる。理由はいろいろだ。

でも、自分が音楽を作る側になると、作業用BGMとして音楽を流すのが難しくなる

音楽を「聴く対象」として扱う仕事をしていると、流れている音楽は全部「聴く対象」になってしまう。BGMとして背景に押しやることが、できなくなる。

これが地味に困る。

ミックス中はもってのほか

当たり前の話だけど、ミックス中に他の音楽は絶対流せない。

耳が他の曲の周波数バランスや音圧感に引っ張られる。自分が今扱っている曲の判断基準が、そのままズレる。

ミックスは「耳の状態」そのものが作業道具みたいなところがある。だから他の音は入れない。

ここは作曲家・エンジニア界隈で異論はないと思う。

作曲・アレンジ中も、自分の音に集中する

フレーズを考えたり、アレンジを組み立てている時も同じ。

レファレンスを確認することはある。「こういう質感で」「こういうグルーヴ感で」と参考にする曲を聴く。でも流しっぱなしにはしない。確認したら止める。

流しっぱなしにすると、自分のフレーズが他の曲の影響を強く受けすぎる。レファレンスのコピーになってしまう瞬間がある。

だから僕は、レファレンスは「短く、部分的に、必要な時だけ」鳴らす。BGMとは真逆の使い方だ。

唯一かろうじて聴けるのは、単純作業の時

例外はある。

打ち込んだMIDIデータのアーティキュレーションを整えたり、MIDI打ちしたフレーズをブラッシュアップしている時。地味な単純作業になりがちな工程では、うっすらBGMが流れていても作業できなくはない。

とはいえ、単純作業に見えてもMIDIの一つ一つの音の繋がりを意識し始めると、結局は何も流さない方が快適になる。

結論、音楽の制作工程ではほぼ全ての場面で、BGMを聴くのは難しい。

だから事務作業とグラフィック作業の時に流してる

じゃあ作業用BGMをいつ流すか。

僕の場合、事務作業とグラフィック作業の時になる。

  • 請求書の作成
  • メールの返信
  • ドット絵を打ったり、グラフィック素材を整えている時

耳を使わない作業の時に、ようやく作業用BGMが機能する。

逆に言うと、耳を使う作業の時間帯は、BGM文化から外れた生活をしている。世の中の作業用BGMプレイリストの恩恵を、半分くらい受けられない。これは音楽を作る職業のささやかな損失かもしれない。

「映画見ながらスケッチするよ」と言った作曲家の友達の話

でも例外的な人もいる。

昔、作曲家の友達から言われて驚いた一言がある。

「映画見ながらスケッチするよ。他にもドラマ見ながらアレンジする人、職場にいるし」

マジか、と思った。

真似してみたけど、どちらにも集中できなくてすぐやめた。映画の音楽が気になって作曲が止まる。作曲に集中すると映画のセリフが頭に入ってこない。両方が中途半端になる。

でも、できる人はできるらしい。音と意識の使い方は、思った以上に人によって違う

音楽を作る人間が皆「BGM聴けない」わけでもない。これは正直、自分にとって発見だった。

まとめ

  1. ミックス中・作曲中は、他の音楽を流すと耳が引っ張られる
  2. レファレンスは「短く、部分的に」が基本。流しっぱなしはしない
  3. 事務作業やグラフィック作業の時間帯にだけ、作業用BGMが機能する
  4. 映画見ながらスケッチできる作曲家もいる。人によってかなり違うらしい

音楽を作る側に回ってみたら、ぜひ自分のタイプを観察してほしい。BGM聴ける派か、聴けない派か。意外と職業病の入口かもしれない。

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