リファレンス曲(参考曲)の使い方は、プロとアマでかなり差が出るポイントだ。ただ似せればいいわけでも、無視していいわけでもない。大事なのは「どこを寄せて、どこを離すか」を理解すること。これを間違えると、ただのコピーになったり、逆に参考にした意味がなくなったりする。自分が実務でどうリファレンスを使っているかを解説する。
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寄せる要素:テンポ・音色・楽器構成・密度
まず、リファレンスに寄せる要素から説明する。自分が寄せるのは、テンポ・音色・楽器構成・密度だ。
テンポは、リファレンスと同じくらいに合わせる。テンポは曲の印象を大きく左右するので、ここが違うと「参考にした感じ」が出にくい。
音色は、状況によって寄せ方を変える。クライアントから「こういう曲みたいなの作って」という明確な指定がある場合は、できるだけ寄せる。特に指定がない場合は、リファレンスをパッと聴いた時に印象に残る音を選んで、その音色を中心に組み立てる。曲の象徴になっている音を捉えることが大事だ。
楽器構成は、だいたい同じにすることが多い。これは次の「密度」と関わってくる。
密度を合わせたいから、楽器構成を揃える。楽曲の密度、つまり音の詰まり具合や情報量をリファレンスと同程度にすると、全体の質感が近づく。スカスカな曲と音が詰まった曲では、同じメロディでも全く違う印象になる。密度は曲の雰囲気を決める重要な要素だ。逆に、密度を合わせて、構成している楽器を差し替えて、違う雰囲気をプラスする、みたいなことも可能になる。
テンポ・音色・楽器構成・密度を寄せると、「雰囲気は似ているのに別の曲」という状態を作れる。これがリファレンス活用の理想形だ。
離す要素:コード進行・構成・象徴的なフレーズ
逆に、離す要素もはっきりしている。コード進行・構成・象徴的なフレーズだ。
コード進行と曲の構成は、自分なりに変えることが多い。ここを寄せてしまうと、「参考」ではなく「コピー」に近づいていく。雰囲気を似せる作業の中で、つい構成まで似せたくなるけれど、そこは意識的に離す。
象徴的なフレーズも同じだ。リファレンス曲の「これが聴きどころ」という印象的なメロディやリフ。ここを似せると、一発でパクリだとわかってしまう。曲の顔になる部分は、自分のオリジナルで作る。
つまり、雰囲気を決める要素(テンポ・音色・密度)は寄せて、楽曲の骨格や個性を決める要素(コード進行・構成・フレーズ)は離す。この切り分けが、リファレンス活用の肝だと思っている。
「参考」と「パクリ」の境界線
「参考」と「パクリ」の境界線は、まさに前の章で挙げた「離す要素」にある。
コード進行、構成、象徴的なフレーズ。この3つが似ていると、パクリっぽくなる。逆に言えば、ここさえ自分のオリジナルで作っていれば、テンポや音色や密度が似ていても「参考にした曲」の範囲に収まる。
雰囲気が似ているのは、ジャンルが同じなら当然のことだ。ロックはロックの、オーケストラはオーケストラの共通言語がある。問題になるのは、その曲固有の「個性」を持ってきてしまうこと。固有の個性は、コード進行・構成・フレーズに宿る。
パクリになるのは、その曲固有の個性を持ってきた時だ。雰囲気の共通点は問題にならない。骨格を自分で作れているかどうかが境界線になる。
使い分け:クライアントワークとオリジナル制作
リファレンスの使い方は、クライアントワークとオリジナル制作で少し変わる。
クライアントワークの場合、注文の段階で「パクリにならない程度に、可能な限りこの曲に近づけてくれ」というオーダーが来ることがしばしばある。この場合は、かなり寄せる。求められているものが明確なので、実はこれは比較的簡単な作業だ。寄せる要素を最大限に寄せて、離す要素だけオリジナルにすればいい。
オリジナル制作の場合は、もう少し自由な発想になる。自分のストック曲やオリジナルを作る時は、「この曲の要素と、あの曲の要素を組み合わせたい」という使い方が近い。複数のリファレンスから要素を抜き出して、掛け合わせる。
たとえば「ニルヴァーナがシンセユニットだったら」みたいな、大喜利のような発想だ。あるアーティストの精神性と、別のジャンルの音色を組み合わせる。こういう掛け合わせから、単一のリファレンスを真似るだけでは出てこない、オリジナルなものが生まれる。これは作っていて純粋に楽しい作業でもある。
複数の要素を掛け合わせると、どのリファレンスにも似ていない独自のものになる。これがオリジナル制作におけるリファレンスの一番面白い使い方だと思っている。
まとめ
- 寄せる要素はテンポ・音色・楽器構成・密度。これらが曲の雰囲気を作る
- 離す要素はコード進行・構成・象徴的なフレーズ。ここを寄せるとコピーになる
- 「参考」と「パクリ」の境界線は、その曲固有の個性を持ってきたかどうか
- クライアントワークは寄せる指定が明確で簡単。オリジナル制作は複数要素の掛け合わせが面白い
リファレンスは、ただ真似るための道具ではない。「どこを寄せて、どこを離すか」を理解して使えば、雰囲気を捉えながらオリジナリティを保てる。そして複数のリファレンスを掛け合わせれば、新しいものを生み出す発想の源にもなる。参考曲との付き合い方に迷っている人の助けになればうれしい。







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