『BGMは目立つな』という風潮への違和感

最近、「ゲームのBGMは目立たず、裏方に徹するべき」という風潮を感じることがある。プレイヤーの邪魔をせず、雰囲気だけを支える。そういう作り方が good とされる空気だ。でも自分は、この風潮に正直、違和感がある。BGMが目立つこと自体は、悪いことじゃないと思っているからだ。

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「良い目立ち」はゲーム体験を豊かにする

まず言いたいのは、かっこよくて目立つBGMは、まったく問題ないということだ。

たとえば、エルデンリングのタイトル画面のBGM。あの曲は強く印象に残るし、思わず手を止めて聴き入ってしまう。でも、それでいいと思う。「手を止めて曲を聴く」という行為そのものが、一つのゲーム体験だと言えるからだ。

これは、ゲームという媒体ならではの強みでもある。映画だと、こうはいかない。映画は時間が一方向に流れ続けるので、観客が「ここで音楽に浸りたい」と思っても、物語は進んでいってしまう。でもゲームは、プレイヤーが手を止めれば、その瞬間にとどまれる。音楽に浸る時間を、プレイヤー自身が選べる。

目立つBGMは、こういう豊かな体験を生み出せる。目立つことが、プレイヤーの体験を損なうとは限らない。むしろ、心に残る瞬間を作り出すこともある。

「手を止めて曲を聴く」のもゲーム体験だ。プレイヤーが音楽に浸る時間を選べるのは、ゲームという媒体の強みでもある。

問題は「悪目立ち」の方

では、何が問題なのか。それは「悪目立ち」の方だ。目立つことそのものではなく、目立ち方が悪いBGMが問題になる。

典型的なのが、SEとかぶる帯域を多分に含んだ曲だ。効果音と同じ帯域でBGMが鳴っていると、肝心のSEが聞こえにくくなる。ゲームでは、足音や攻撃音、システム音といったSEが重要な情報を伝えている。それをBGMが邪魔してしまうと、プレイ体験そのものを損なう。これは明確に良くない目立ち方だ。

もう一つは、特定のフレーズが頻繁に流れてくる曲。印象的なフレーズも、繰り返されすぎると耳につく。「またこのフレーズか」とプレイヤーに思わせてしまうと、没入感が削がれる。ループするゲームBGMでは、特に気をつけたいポイントだ。

つまり、批判されるべきは「目立つこと」ではなく、「プレイ体験を阻害する目立ち方」だ。この二つは、分けて考える必要がある。

自分は「印象に残るBGM」を目指している

個人的なスタンスを言えば、自分は裏方に徹するタイプより、前面に主張してくるタイプのBGMの方が好きだ。

「裏方に徹する」タイプのBGMが最近人気な印象はある。それも一つの正解だとは思う。でも自分が影響を受けてきたのは、90年代のハリウッド映画音楽や、スーパーファミコン時代のゲーム音楽だ。あの時代の音楽は、強く主張して、心に残った。聴いた人の記憶に刻まれるような力があった。

だから自分は、基本的に印象に残るBGMを目指している。ゲーム内のキャラクターの気持ちや、プレイヤーの感情を、音楽で強く表現したい。雰囲気を支えるだけでなく、感情を動かす音楽でありたいと思っている。

音楽は、プレイヤーの感情に直接働きかけられる。その力を、控えめにすることで手放してしまうのは、もったいないと感じる。心を動かすために、主張することを恐れたくない。

音楽は感情に直接働きかけられる。その力を、控えめにすることで手放すのはもったいない。心を動かすために、主張を恐れたくない。

裏方に徹するのは「演出上必要な時」だけ

もちろん、いつも主張すればいいわけではない。裏方に徹するべき場面もある。

演出上、控えめにして雰囲気だけを支えたい時は、裏方に徹する作り方をする。緊張感を保ちたいシーン、静かな会話の場面、プレイヤーに集中してほしい場面。こういう時は、メロディの主張を抑える。

具体的には、音数を極端に少なくしたり、逆に多くしたりして、印象に残りづらいメロディにする。強く展開を変えることもしない。あえて記憶に残らないように作ることで、プレイヤーの意識を音楽以外に向けさせる。

でも、これはあくまで「演出上必要な時」の手段だ。裏方に徹すること自体が目的ではない。シーンが求めているなら裏方になるし、求めているなら前に出る。大事なのは、その場面に何が必要かで判断することだ。「目立つな」という一律のルールに従うことではない。

まとめ

  1. BGMが目立つこと自体は悪じゃない。手を止めて聴ける曲は、ゲームならではの体験を生む
  2. 問題なのは「悪目立ち」。SEとかぶる帯域や、フレーズの過剰な繰り返しが没入を削ぐ
  3. 自分は印象に残るBGMを目指している。キャラやプレイヤーの感情を強く表現したい
  4. 裏方に徹するのは演出上必要な時の手段。それ自体が目的ではない

「BGMは目立つな」という風潮は、一面では正しい。悪目立ちは避けるべきだ。でも、それを「目立つこと自体が悪」と捉えてしまうと、音楽が持つ力を狭めてしまう。目立っていいBGMもある。心に残っていいBGMもある。場面が求めるなら、堂々と主張すればいい。それが自分の考える、ゲーム音楽との向き合い方だ。

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