「BGMは何曲くらい頼めばいいですか」。見積もりの前にいちばん多く聞かれる質問です。ところがこれは、ゲームの長さを聞いただけでは答えが出せません。曲数を決めているのは総プレイ時間ではなく、プレイヤーが目にする「画面」と、ゲームが持つ「状態」の数だからです。
この記事では、ジャンル別の曲数の目安、効果音の点数、そして発注リスト(キューシート)の作り方までを、受注側の実務目線で整理します。
先に結論。曲数は「画面数+状態数」で数えます。短編ノベルなら5〜8曲、中規模RPGなら25〜40曲が目安。迷ったら、まずタイトル・メイン・戦闘(または緊張)・エンディングの4曲から組み立てると破綻しません。
曲数は「時間」ではなく「画面と状態」で決まる
20時間遊べるゲームでも、画面がマップと戦闘の2種類しかなければBGMは数曲で足ります。逆に2時間で終わる短編ノベルでも、舞台が5か所あって回想と緊迫の場面があるなら、10曲近く必要になります。曲数を見積もるときは、次の2つを数えてください。
- 画面(シーン)の数:タイトル、メニュー、フィールド、街、ダンジョン、戦闘、ショップ、結果画面など、切り替わる場所の数。
- 状態(ムード)の数:同じ場所でも「平常」「緊迫」「悲しい」「勝利」のように空気が変わる回数。
この2つを足した数が、必要な曲数のたたき台になります。ここから「1曲で兼用できるところ」を削っていくと、現実的な数に落ち着きます。
ジャンル別・BGM曲数の目安
| ジャンル | 想定プレイ時間 | BGM曲数の目安 |
|---|---|---|
| ノベル・ADV(短編) | 1〜2時間 | 5〜8曲 |
| ノベル・ADV(中編〜長編) | 5〜15時間 | 10〜20曲 |
| RPG(中規模) | 10〜20時間 | 25〜40曲 |
| アクション・アクションRPG | 3〜8時間 | 12〜20曲 |
| シューティング | 1〜3時間 | 8〜14曲 |
| パズル・カジュアル | エンドレス | 3〜6曲 |
| ホラー・脱出 | 2〜5時間 | 6〜12曲 |
| シミュレーション・経営 | 20時間以上 | 15〜25曲 |
| 同人・ゲームジャム作品 | 15分〜1時間 | 2〜5曲 |
あくまで目安です。演出の密度が高い作品はこの上限を超えますし、アートスタイルで世界観を作り切っている作品は下限でも成立します。
ノベル・ADV
テキストを読ませるジャンルなので、1曲あたりの再生時間が長くなります。ここでケチると同じ曲を10分聴かせることになり、確実に飽きられます。曲数を絞るなら、代わりに1曲のループを長めに作るのが正解です。最低限そろえたいのは、タイトル、日常、シリアス、回想、エンディングの5系統。
RPG
もっとも曲数が必要なジャンルです。フィールド・街・ダンジョンがそれぞれ複数あり、戦闘も通常戦とボス戦で分かれます。ここで効くのがアレンジ差分で、街のテーマを夜バージョンにするだけで、新規1曲より安く雰囲気を足せます。
アクション・シューティング
ステージ数に比例します。テンポの速い曲は展開が早いぶんループの周期も短く、繰り返しに気づかれやすいので、ステージごとに変えたほうが体験がよくなります。ボス曲だけは専用で用意するのを強くおすすめします。
パズル・カジュアル
長時間流れ続ける前提なので、主張しすぎない曲を少数精鋭で。むしろ効果音の気持ちよさが体験を左右するジャンルです。BGMを3曲に絞って、その予算を効果音に回す判断は十分あり得ます。
ホラー・脱出
「無音」も演出のひとつなので、曲数は少なめでも成立します。代わりに環境音(アンビエンス)とスティンガーが主役になります。曲というより音響設計の発注に近づくジャンルです。
シミュレーション・経営
プレイ時間が長く、画面の種類も多いジャンルです。ただし1画面に長く留まるため、ノベル同様ループを長く取る設計が効きます。季節やフェーズで曲が変わる仕様にすると、曲数は一気に増えます。
RPGの発注リスト例(30曲構成)
実際に発注リストを作るとこうなります。数を決めるより、この形で書き出してみるほうが早く固まります。
- タイトル・システム(4曲):タイトル、メニュー、ショップ、宿屋・回復
- フィールド・街(7曲):最初の町、港町、王都、雪原フィールド、平原フィールド、山道、夜の町(アレンジ差分)
- ダンジョン(4曲):洞窟、遺跡、塔、最終ダンジョン
- 戦闘(5曲):通常戦闘、強敵戦、中ボス、ラスボス、最終形態
- イベント(6曲):日常、緊迫、悲しい、感動、コミカル、回想
- 短尺(4曲):勝利ファンファーレ、レベルアップ、ゲームオーバー、エンディング
短尺の4つは10〜20秒で済むものが多く、フル尺の曲より安く作れます。「30曲」と聞くと身構えますが、内訳を見ると全部がフル尺ではありません。
曲数を増やさずにボリューム感を出す4つの方法
- アレンジ差分を作る:同じメロディをピアノソロ、オルゴール、ストリングスに置き換える。新規1曲より安く済むことが多い手法です。
- レイヤー(ステム)で渡す:ドラムあり・なし、メロディあり・なしを別ファイルで納品し、実装側で切り替える。1曲が2〜3通りに化けます。
- ループを長く作る:60秒の曲を90秒にするだけで、体感の繰り返し感は大きく減ります。尺による料金差より、飽きの改善効果が大きい場面は多いです。
- スティンガー・ジングルを混ぜる:10秒前後の短い音を要所に挟むと、曲数が同じでも展開が増えたように感じられます。
とくにレイヤー納品は、実装の手間はかかりますが費用対効果が高い手です。渡し方の詳細はループBGMの納品形式にまとめています。
効果音は何点必要か
効果音はBGMより点数が多くなります。ざっくりした目安はこちらです。
| ジャンル | 効果音の点数目安 |
|---|---|
| ノベル・ADV | 20〜40点 |
| パズル・カジュアル | 30〜60点 |
| RPG | 80〜150点 |
| アクション・シューティング | 100〜250点 |
| ホラー・脱出 | 40〜80点(環境音を多めに) |
まず優先すべきはUI基本セットです。決定、キャンセル、カーソル移動、ウィンドウ開閉、エラー、購入完了。この6つがそろっているだけで、体験の完成度は目に見えて上がります。10点前後から発注できるので、最初の一歩にしやすい部分でもあります。
予算から逆算する場合
先に予算が決まっているなら、そこから曲数を割り出すほうが早いです。当スタジオの料金を例にすると、こうなります。
| 内容 | 料金(税抜) |
|---|---|
| 30秒以内のBGM | 20,000円〜 |
| 60秒のBGM | 30,000円〜 |
| 90秒のBGM | 35,000円〜 |
| 2〜5分のBGM | 50,000円〜 |
| 効果音 | 1点 2,000円〜 |
| ジングル(10秒以内) | 1点 5,000円〜 |
曲数が多くなる場合は、BGM5曲+効果音10点+マスタリング・ループ加工・各種形式の書き出しを含んだ一括パッケージ(200,000円〜)もあります。6曲目以降は1曲20,000円〜、効果音の追加は1点2,000円〜で調整できるので、まずパッケージを土台にして増減させるのが分かりやすいはずです。料金の考え方そのものはゲームBGMの制作依頼、費用はいくら?相場と料金を左右する5つの要素で詳しく書いています。
曲数を決めるときによくある失敗
- 全曲をフル尺で見積もる:ゲームオーバーや勝利ジングルまで2分で発注してしまい、予算を圧迫するケース。短尺で足りる曲を切り分けましょう。
- タイトルとエンディングを後回しにする:この2曲は作品の印象を決める枠です。予算が尽きてから作ると確実に妥協が出ます。先に確保してください。
- 戦闘曲を1曲で済ませる:周回するジャンルでいちばん聴かれる曲です。ここを削るのは体験への影響が大きい判断になります。
- 仕様が固まる前に全曲まとめて発注する:あとで画面構成が変わると作り直しになります。序盤の数曲で方向性を固めてから残りを出すほうが、結果的に安く済みます。
よくある質問
途中で曲数を増やせますか
可能です。むしろ推奨しています。最初に全部を確定させるより、実機に入れてから足りない場所を追加するほうが無駄がありません。
1曲だけでも依頼できますか
できます。タイトル曲だけ、ボス曲だけといったご依頼も承っています。
曲数を減らす代わりに、1曲のクオリティを上げるべきですか
ジャンル次第です。プレイヤーが同じ画面に長く留まる作品(ノベル、シミュレーション)は曲の質とループ設計に寄せる価値があります。画面がどんどん切り替わる作品(アクション、STG)は、曲数を確保したほうが体験が良くなりやすいです。
サントラを出す予定がある場合、曲数の考え方は変わりますか
変わります。サントラ販売や動画への転用を想定するなら、権利の扱いを先に決めておく必要があります。BGMの著作権、譲渡と使用許諾はどう違うのかを先に読んでおくと、あとで詰まりません。
まとめ
- 曲数はプレイ時間ではなく、画面の数+状態の数で見積もる。
- 短編ノベルは5〜8曲、中規模RPGは25〜40曲が目安。全部がフル尺ではない。
- アレンジ差分・レイヤー納品・ループ長・ジングルで、曲数を増やさずに厚みを出せる。
- 効果音はまずUI基本セット6種を優先。10点前後から発注可能。
- 予算が先に決まっているなら、パッケージを土台にして曲数を増減させるのが分かりやすい。
必要な曲数がはっきりしなくても構いません。ゲームの画面構成をお聞かせいただければ、こちらで発注リストの案を作ってお返しします。制作のご依頼ページからお気軽にご相談ください。
必要な曲数のご相談から承ります
ゲーム音楽15年・ゲーム会社所属11年目のクリエイターが、作曲からミックス・マスタリング、ループ加工、納品形式の書き出しまで一貫して対応します。BGMは30秒20,000円〜(税抜)、効果音は1点2,000円〜。お見積もり・ご相談は無料、2営業日以内にご返信します。












