探偵・ミステリーADVのBGM選び【シーン別の設計とフリー素材6曲】

探偵ものやミステリーADVを作っていて、BGMで最初につまずくのは曲の良し悪しではありません。どのシーンで音楽が切り替わるかを決めていないことです。テキストを読ませる時間が長いジャンルなので、切り替えの設計を後回しにすると、同じ曲が延々と鳴り続けて緊張感が抜けるか、逆に細かく切り替えすぎて場面がうるさくなります。

この記事では、探偵・ミステリーADVに必要なBGMの枠を6つに整理し、それぞれに何を鳴らすかを決める手順をまとめます。あわせて、当サイトで配布している商用利用OKのフリーBGMのうち、ミステリー・探偵・サスペンス系の6曲を試聴つきで紹介します。個人制作でも、章立てのある長編でも同じ手順で使えます。

先に結論。ADVのBGMは枠を決める→尺を決める→曲を当てるの順で進めます。曲を先に選ぶと、あとから場面が増えたときに足りなくなり、雰囲気の合わない曲を無理に使い回すことになります。

ADVのBGMは「曲数」より「切り替わる場所」で決まる

アクションゲームは場面が目に見えて変わるので、BGMの切り替えポイントも自然に決まります。ADVは違います。画面はほとんど動かず、変化するのは文章の中身だけです。プレイヤーが「話が動いた」と感じる瞬間を、こちら側で決めて音で示す必要があります。

切り替えの候補になるのは、場所が変わったとき、登場人物が増えたとき、新しい情報が出たとき、そして主人公の判断が変わったときです。この4つのうち、ひとつのシナリオで実際に音を変えるのは多くても2つに絞ります。全部で切り替えると、プレイヤーは音楽の変化を情報として受け取らなくなります。

曲数の目安そのものについては、ジャンル別にまとめたゲーム1本にBGMは何曲必要かで解説しています。ADVは他ジャンルより曲数を抑えられる代わりに、1曲あたりの再生時間が長くなるジャンルです。

ミステリーADVで最低限そろえたいBGMの6枠

枠というのは「この性格の曲が1本必要」という入れ物のことです。曲名ではなく役割で先に決めておくと、素材を探すときも、制作を依頼するときも判断が速くなります。探偵・ミステリーADVでは、次の6枠がそろっていれば短編から中編まで成立します。

役割鳴る場面目安の尺ループ
1. 日常・拠点情報を整理する時間。音楽は主張しない事務所での会話、章の始まり1:00〜2:00必要
2. 捜査・探索手を動かしている感じを出す現場調査、聞き込み、証拠品の確認1:00〜2:00必要
3. 不穏・違和感情報が噛み合わない不安を残す証言の矛盾、隠し事の気配0:50〜1:30必要
4. 緊迫・追跡テンポを上げて時間を意識させる逃走、時間制限、犯人の接近0:30〜1:30任意
5. 衝撃・発覚短く刺して場面を区切る真相の発覚、どんでん返し0:10〜1:00不要
6. 対決・決着感情を持ち上げて話を締める告発、最終尋問、エピローグ前1:30〜2:30必要

この6枠のうち、最初に用意すべきは1と2です。プレイ時間の大半を占めるのはこの2枠で、ここが弱いと全体が退屈になります。逆に5の「衝撃・発覚」は登場回数が少ないので、短い曲やジングル1本で足ります。長い曲を作り込んでも、ほとんど鳴らないまま終わります。

枠が決まったら、シナリオの章ごとに「この章で鳴る枠はどれか」を書き出します。書き出してみると、たいてい3の「不穏」だけが極端に多くなります。その場合は同じ枠を2曲に分けて、静かめと濃いめを使い分けると単調さが消えます。

枠に当てられるフリーBGM6曲(試聴つき)

ここからは、当サイトで配布しているBGMのうち、ミステリー・探偵・サスペンス系の6曲を枠に対応させて並べます。いずれも商用・非商用問わず無料で使えます(無料利用の場合はクレジット表記をお願いしています。詳細は後半の表と利用規約をご確認ください)。曲名のリンク先が個別のダウンロードページです。

Sudden Revelation / 5. 衝撃・発覚 / 0:56

Sudden Revelation のダウンロードページ →

Dark Premonition / 3. 不穏・違和感 / 1:52

Dark Premonition のダウンロードページ →

Dark Mechanism / 2. 捜査・探索 / 1:36

Dark Mechanism のダウンロードページ →

Rising Malice / 6. 対決・決着 / 2:31

Rising Malice のダウンロードページ →

Foreboding Rush / 4. 緊迫・追跡 / 1:32

Foreboding Rush のダウンロードページ →

Looming over / 3. 不穏・違和感 / 1:22

Looming over のダウンロードページ →

楽曲の細かい仕様は次の表にまとめました。キーとBPMを見ておくと、あとから効果音や別の曲を足すときにぶつかりにくくなります。とくに「衝撃・発覚」で鳴らす曲は、直前の曲とキーが半音でずれていると気持ち悪く聞こえることがあるので、当て込む順番も一緒に確認してください。

曲名BPMキー主な楽器得意なシーン
Sudden Revelation0:56120C#dimエレキギター、シンセパッド、シンセリード真相の発覚、どんでん返し
Dark Premonition1:52135Eマイナーシンセベース、ベル系シンセ、ブレイクビート悪意ある計画が静かに動く場面
Dark Mechanism1:36119Dマイナーシンセベース、アルペジオ、シンセリード潜入、機械的な施設の探索
Rising Malice2:3199Eマイナーストリングス、ブラス、ティンパニ、ギター対決前、悪意がじわじわ高まる場面
Foreboding Rush1:32135Gマイナーストリングス、ブラス、パーカッション逃走、追跡、時間制限
Looming over1:22106ピアノ、シンセサイザー静かな探索から緊張が上がる場面

ほかのジャンルも含めた一覧は著作権フリーBGMのページにあります。足音やUI音などは著作権フリー効果音にまとめています。

6曲を章立てに当てはめてみる

枠と曲がそろっても、どこで鳴らすかを決めないと使いこなせません。3章構成の短編ミステリーを例に、実際の並べ方を書き出してみます。

1章は依頼の受任と現場の下見です。会話が続くので、探索枠の Dark Mechanism を低めの音量で流し続けます。証言に食い違いが出た瞬間だけ Looming over に切り替え、章の終わりで無音に落とします。ここで一度音を止めておくと、2章の頭で音楽が戻ったときに場面が変わったことが伝わります。

2章は聞き込みと尾行です。前半は Dark Premonition で「裏で何かが動いている」感じを出し、対象に気づかれて逃げられる場面で Foreboding Rush に切り替えます。追跡が終わったら、また Dark Premonition に戻します。同じ曲に戻すのは手抜きではなく、プレイヤーに「日常の側に帰ってきた」と伝える合図になります。

3章は告発と決着です。Rising Malice を頭から流し、真相を突きつける1行の直前で音を切って、Sudden Revelation を鳴らします。この曲は1分弱なので、鳴らし終わったら無音に戻すか、余韻のある曲に差し替えて締めます。衝撃の枠だけは、ループさせずに鳴らし切るほうがきれいに決まります。

この書き出しをそのまま実装メモにできると作業が速くなります。書き方はBGM・効果音の発注仕様書の書き方で紹介しているテンプレートがそのまま使えます。曲を自分で作る場合でも、当てる場所を先に書いてから作ると迷いが減ります。

尺とループは「会話が長い」前提で決める

ADVでいちばん多い失敗は、曲が短すぎることです。1分の曲を会話5分のシーンに使うと、同じフレーズを5回聞かされます。プレイヤーは3周目くらいで飽きるので、探索や日常の枠は1分半から2分あると安心です。逆に追跡や衝撃の枠は短くて構いません。長くしても、その場面自体が長く続かないからです。

もうひとつ大事なのがループの繋ぎ目です。イントロがある曲をそのままループさせると、2周目でイントロがもう一度鳴って不自然になります。イントロ部分を切り離して、本体だけを繰り返す作りにするのが基本です。ループポイントの渡し方や書き出し形式はループBGMの納品形式で具体的に書いています。

実装側の都合も先に確認しておきます。エンジンによってはループ位置をサンプル数で指定する必要があり、mp3のままだと隙間が空くことがあります。ADVはBGMが長時間鳴るジャンルなので、繋ぎ目の違和感は他ジャンルより目立ちます。

文字送り音や効果音と喧嘩させない

ADVはBGMの上に文字送り音がずっと重なります。ここが混ざると、音楽も台詞も聞き取りにくくなります。順番としては、まず文字送り音とUI音の音量を決めて、その下にBGMを置きます。BGMを主役にすると、読むテンポの邪魔になります。

ぶつかりやすいのは高域です。文字送り音はクリック系の短い音なので、同じ帯域でシンバルやベルが鳴っていると埋もれます。BGM側の高域を少し削るか、文字送り音を低めの音色に変えると解決します。曲を差し替えるより早い対処です。

もうひとつ、シーンをまたいだ音量差にも注意します。オーケストラ系とピアノ単体の曲を並べると、体感の大きさがかなり違います。実装前に全曲を並べて聴き、章の切り替わりで極端に大きくならないかを確認しておくと安全です。足音やドアなどの効果音は著作権フリー効果音にもあるので、同じ出どころでそろえると音量の調整が楽になります。

フリー素材を使うときに守ること

当サイトの素材の条件を、実際の利用規約から要点だけ抜き出したのが次の表です。同人でも商用でも、ゲームに組み込んで配布・販売できます。

項目内容
利用範囲個人・法人・公的機関を問わず、商用・非商用のいずれも無料。利用報告は不要
使える用途ゲーム(同人・商用問わず)、動画、配信、Webサイト・アプリ、映像作品、店舗BGM、学校教材など
クレジット表記無料利用の場合はお願いしています。サイト名かURLのいずれかが含まれていれば形式は自由
表記が不要なケースFANBOX「商用利用フリープラン」(月額500円)の加入期間中に制作した作品
禁止されること素材そのものを主なコンテンツにする動画、再配布・転載、素材の販売、自作と偽る行為、JASRAC等への登録、Content IDなどへの登録、AI学習データとしての利用、公序良俗に反する用途
著作権illmatic studio に帰属。規約は利用の許諾であり、著作権の譲渡ではない
免責利用によって生じた損害について責任は負わない。素材は予告なく変更・削除される場合がある

ゲームをストアで売る場合、審査で権利関係を書く欄があります。フリー素材は「使用許諾を受けて使っている」状態で、権利そのものを持っているわけではありません。この違いはBGMの著作権、譲渡と使用許諾はどう違うのかで整理しています。独占して使いたい、権利をまとめて自分側に置きたいという場合は、フリー素材ではなくオリジナル制作の話になります。

なお、ここに書いた内容は規約の要約で、法的助言ではありません。最新の条文は利用規約のページが優先されます。判断に迷う使い方があれば、問い合わせから確認していただくのが確実です。

よくある質問

ミステリーADVにBGMは何曲必要ですか

短編なら、この記事の6枠に1曲ずつで足ります。プレイ時間が長い作品では、探索と不穏の枠を2曲ずつに分けて8曲前後にすると単調さが消えます。章ごとに専用曲を用意する必要はありません。

フリー素材とオリジナル制作を混ぜてもいいですか

問題ありません。日常や探索のようにプレイ時間の長い枠をフリー素材でまかない、決着やタイトル曲だけオリジナルにする組み方は現実的です。判断の基準はフリーBGMとオリジナル制作、どちらを選ぶべきかにまとめています。

尺を詰めたりループ加工をしてもいいですか

作品に合わせて長さを調整したり、ループしやすく編集して使うのは問題ありません。禁止しているのは、素材ファイルそのものの再配布や販売、素材自体が主役になる動画などです。

曲の雰囲気が作品と合わない場合はどうすればいいですか

無理に当てず、その枠だけ新規制作に回すほうが早く決まります。参考として「この曲のこの部分の雰囲気で、もう少し落ち着いたもの」と伝えていただければ方向性を合わせられます。発注前に決めておく項目はゲームサウンド発注チェックリストにまとめてあります。

まとめ

探偵・ミステリーADVのBGMは、曲を集める前に枠を決めるのが近道です。日常・捜査・不穏・緊迫・衝撃・対決の6枠を用意し、章ごとにどの枠が鳴るかを書き出す。そのうえで尺とループを決め、最後に曲を当てる。この順番で進めれば、途中で足りなくなることも、似た曲が延々と鳴り続けることもなくなります。

紹介した6曲はそのまま無料で使えます。まずは枠に当ててみて、合わない枠だけを別の方法で埋めるのが、いちばん手戻りの少ない進め方です。

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埋まらない枠だけ、作ります

ゲーム音楽15年・ゲーム会社所属11年目のクリエイターが、作曲からミックス・マスタリング、ループ加工、納品形式の書き出しまで一貫して対応します。BGMは30秒20,000円〜(税抜)、効果音は1点2,000円〜。お見積もり・ご相談は無料、2営業日以内にご返信します。

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