BGMを発注するとき、意外と後回しにされがちなのが納品形式です。ところがここを決めずに進めると、いざ実装する段階で「ループの継ぎ目でプツッと鳴る」「ファイルが重すぎてビルドサイズが膨らむ」といった手戻りが発生します。作り直しではなく書き出し設定の問題なので、発注時にひとこと伝えておくだけで防げます。
この記事では、ゲーム開発者・発注者の立場から、wav / ogg / mp3 の使い分け、サンプルレートとビット深度、そしてループポイントの渡し方を整理します。
結論:マスターはwav、ゲームに載せるのは環境に合わせて変換
迷ったら「非圧縮のwavで納品してもらい、圧縮はこちらの環境に合わせてかける」のがいちばん安全です。圧縮済みのファイルを再圧縮すると音質が二重に劣化しますが、wavを持っていれば後からいくらでも変換できます。
納品してもらうべきは「最終形」ではなく「最終形を作れる素材」。wavを手元に持っておくと、プラットフォームが増えたときにも作り直しが要りません。
wav / ogg / mp3 の使い分け
wav(非圧縮)
音の劣化がなく、編集にも耐えます。容量は大きくなりますが、マスター納品としては第一候補です。PC・コンソール向けや、サウンドミドルウェアに読み込ませる素材としてもwavが基本になります。ループ情報を埋め込めるのもwavの利点です。
ogg(Vorbis)
圧縮フォーマットで、容量を抑えつつ実用的な音質を保てます。ループ再生との相性が良いため、ゲーム内BGMの実装形式としてよく使われます。多くのゲームエンジンが標準で対応しています。
mp3
汎用性は高いものの、エンコードの仕組み上、ファイルの先頭と末尾にごくわずかな無音が入ります。これがループ再生では継ぎ目の「間」や「プツッ」という音になって現れます。シームレスにループさせたいBGMには向きません。クライアントへの試聴共有や、ループしない一発物のジングルなら問題ありません。
まとめると、マスター=wav/ゲーム内のループBGM=ogg/確認用の共有=mp3という切り分けが分かりやすいと思います。
サンプルレートとビット深度
特に指定がなければ、48kHz / 24bit のwavで納品するのが無難です。映像やゲームの世界では48kHzが標準的で、24bitあれば実装時に音量を調整しても余裕があります。
ただし、プロジェクト側で44.1kHzに統一している、16bitでないと読み込めない、といった事情がある場合は発注時に伝えてください。制作側で最初からその設定で作れば、変換による劣化を避けられます。あとから「やっぱり44.1kHzで」となると、書き出し直しの手間が発生します。
モノラルかステレオかも同様です。効果音は用途によってモノラルのほうが扱いやすいことがあります。3D空間に配置する音であれば、モノラル納品を指定しておくとエンジン側での取り回しが楽になります。
ループポイントの渡し方 4パターン
ここが一番トラブルになりやすい部分です。方式はいくつかあるので、実装環境に合うものを選んでください。
① ループ済みの1ファイル
曲の末尾と先頭が自然につながるように作り込んだ、1本のファイル。再生側はただリピートするだけで済みます。いちばんシンプルで、環境を選びません。個人・小規模開発ならこれで十分なことが多いです。
② イントロ+ループ本体の2ファイル
「イントロを1回鳴らしてから、ループ本体を繰り返す」構成。フィールドや戦闘BGMで、頭の入りを印象づけたいときに使います。実装側で2ファイルを切れ目なくつなぐ処理が必要になるので、対応できるかを先に確認してください。
③ wavにループマーカーを埋め込む
wavファイル内にループ開始・終了の位置情報を持たせる方法です。対応しているツールやミドルウェアであれば、ファイル1本でイントロ付きループが実現できます。読み込む側が対応しているかどうかが前提になります。
④ サンプル位置をテキストで指定する
「ループ開始 = 480000サンプル、ループ終了 = 2880000サンプル」のように、数値をテキストで併記してもらう方法。どんな環境でも確実に伝わるので、③が使えない場合の現実的な代替になります。秒数ではなくサンプル数で受け取るのがポイントで、秒数だと丸め誤差で継ぎ目がずれることがあります。
どの方式でも、発注時に「①〜④のどれで欲しいか」を伝えるだけで話が早くなります。分からない場合は、使っているエンジンやミドルウェアの名前を伝えてもらえれば、こちらから提案できます。
サウンドミドルウェアを使う場合
Wwise や CRI ADX などのミドルウェアを使うプロジェクトでは、圧縮とループ設定はミドルウェア側で行うのが基本です。この場合、素材は非圧縮のwavで受け取り、ミドルウェアに取り込んでからエンコード設定を決めます。あらかじめoggに圧縮された素材を渡されると、そこから再圧縮することになって不利です。
ミドルウェアを使う予定があるなら、その旨だけでも最初に共有してください。納品形式の判断が変わります。
発注時に伝えておきたいこと
- ファイル形式:wav納品か、ogg/mp3も必要か
- サンプルレート/ビット深度:指定があれば(なければ48kHz/24bit)
- ステレオ/モノラル:特に効果音
- ループの有無と方式:①〜④のどれか、またはエンジン名
- ファイル命名規則:bgm_field_01 のような命名ルールがあれば
- 音量の基準:他の素材とそろえたいラウドネスの目安があれば
この6項目をテンプレートにして渡してもらえると、納品時の差し戻しがほぼなくなります。とくに命名規則は、後から一括リネームするより最初から揃っているほうが圧倒的に楽です。
当スタジオの納品について
illmatic studio では、wavでの納品を基本とし、ループ加工と各種形式への書き出しを料金に含めています。ogg / mp3 での同時納品や、サンプル位置の指定、イントロ+ループの分割納品にも対応します。ご希望の形式が決まっていない場合は、使用しているエンジンを教えていただければこちらから提案します。
料金と納期は制作のご依頼ページに、費用の考え方はゲームBGMの制作依頼、費用はいくら?、権利の扱いはBGMの著作権、譲渡と使用許諾はどう違うのかにまとめています。
まとめ
- マスターはwav(48kHz/24bit)で受け取り、圧縮は実装環境に合わせてかける
- ゲーム内のループBGMはogg。mp3は先頭・末尾の無音でループが崩れるため不向き
- ループの渡し方は「ループ済み1ファイル/イントロ+ループ分割/wavマーカー/サンプル位置のテキスト指定」の4通り
- 秒数ではなくサンプル数で指定すると継ぎ目がずれない
- ミドルウェアを使うなら素材は非圧縮wavで。圧縮はミドルウェア側で
- 形式・サンプルレート・ループ方式・命名規則・音量基準を発注時に伝えると差し戻しが消える
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ループ加工・各種形式の書き出しまで含めて制作します
ゲーム音楽15年・ゲーム会社所属11年目のクリエイターが、作曲からミックス・マスタリング、ループ加工、納品形式の書き出しまで一貫して対応します。BGMは30秒20,000円〜(税抜)、効果音は1点2,000円〜。お見積もり・ご相談は無料、2営業日以内にご返信します。













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