和風ホラーゲームのBGM設計【シーン別の割り当てとフリー素材9曲】

暗闇に浮かぶ赤い提灯

和風ホラーは、BGMを探すのが難しいジャンルです。「ホラー BGM フリー」で出てくる曲の多くは洋風の作りで、和の舞台に当てると音だけが浮きます。かといって和楽器が鳴っていれば和風ホラーになるかというと、それも違います。

この記事では、和風ホラーゲームや怪談系の映像でBGMをどう割り当てるかを、シーンの進み方に沿って整理します。あわせて、当サイトで無料配布している和風ホラーBGM9曲を、どんな場面に当てる想定で作ったかとセットで紹介します。

先に結論です。和風ホラーのBGMは、怖い音を足すのではなく、鳴っている音を減らす方向で決まります。探索・接近・遭遇・逃走の4段階に分けて、段階が上がるほど音数とテンポを増やす。この設計にしておけば、曲数が少なくても怖さは作れます。

和風ホラーのBGMは、怖い音を足すより引き算で決まる

ホラーが怖くならないとき、原因はたいてい音が多すぎることにあります。不穏なパッド、低い持続音、ノイズ、金属音。ひとつずつは怖い音でも、全部同時に鳴らすと、耳がその状態に慣れます。慣れた耳は、次に何が起きても驚きません。

怖さは音そのものではなく、音の落差から生まれます。静かな時間が長いほど、そこに一音が入ったときの効きが大きくなる。だからホラーのBGMは、盛り上げる曲を選ぶ作業ではなく、どこまで音を減らせるかを決める作業になります。

実際の作業に落とすと、こういう手順になります。まず、BGMをまったく鳴らさない時間をマップのどこに置くかを決める。次に、鳴らす場所には音数の少ない曲を置く。最後に、盛り上がる曲を一番強い場面にだけ使う。この順番で決めると、盛り上がる曲が自然に少なくなります。少なくていいんです。

もうひとつ、意外と効くのが音量です。ホラーBGMは、他ジャンルより数dB下げたほうが怖くなります。小さいと耳を澄ますからです。耳を澄ませている状態のプレイヤーは、足音ひとつで飛び上がります。足音や環境音の設計についてはヒールの足音SEを自然に鳴らす方法にまとめてあるので、あわせて読んでみてください。

和風ホラーと洋風ホラーは、怖がらせ方の順番が違う

同じホラーでも、洋風と和風では観客を怖がらせる順番が違います。ここを取り違えると、曲がどれだけ良くても場面から浮きます。

洋風ホラーは、何かがいることを先に見せて、いつ襲ってくるかで引っ張ります。だからBGMも、緊張を上げ続けて頂点で解放する形になりやすい。対して和風ホラーは、何かがいるかどうかもはっきりさせないまま進みます。音を鳴らさない時間が長く、鳴っても意味が読み取れない。この「わからなさ」が持続するのが和風ホラーの怖さです。

項目洋風ホラー寄り和風ホラー寄り
脅威の見せ方正体を早めに見せる最後まで見せない
テンポ感速い曲を要所で使う遅い曲を長く鳴らす
音数厚く積んで圧をかける削って間を残す
盛り上がりの形上げて解放する上げきらずに引く
無音の扱い直前の溜めとして使う常態として長く置く
効きどころ遭遇・戦闘探索・移動

もちろん、どちらかに寄せなければいけないわけではありません。和の舞台でも、逃走シーンは洋風ホラーの作りのほうがうまくいきます。表は「どこに重心を置くか」の目安として見てください。

和楽器についても一言。琴や尺八が鳴っていれば和風になる、というのは半分だけ正しいです。和楽器は場所を説明する力が強いので、入れた瞬間に舞台が決まります。ただ、フレーズがはっきりしていると「和風の情景BGM」に寄って、怖さが引っ込みます。和風ホラーで和楽器を使うなら、旋律を弾かせるより、単発の余韻や、擦れる音として置くほうが効きます。

探索・接近・遭遇・逃走の4段階に曲を割り当てる

曲を決める前に、ゲームの進行を段階に分けます。和風ホラーなら、探索・接近・遭遇・逃走の4つで足ります。この4つに1曲ずつ当てるところから始めて、必要なら枝を増やしていく。最初から10曲の内訳を考えるより、はるかに早く形になります。

段階プレイヤーの状態BGMの狙いテンポの目安
探索まだ何も起きていない音数を絞り、間を長く取る50〜60
接近何かがいると気づく音数はそのまま、音域を下げる60〜80
遭遇目の前に現れる一気に音を入れて落差を作る80〜110
逃走追われている刻みを立てて足を動かさせる110〜150

この4段階で大事なのは、隣り合う段階の差をはっきりさせることです。探索と接近の曲が似ていると、プレイヤーは切り替わったことに気づきません。気づかない演出は、無いのと同じです。テンポを10しか変えないより、音域や楽器の数を変えたほうが、差は伝わります。

逆に、遭遇と逃走は続けて鳴ることが多いので、ここだけはつながりを意識します。遭遇の曲の終わりと逃走の曲の頭で、同じ楽器が残っていると自然につながります。曲をまたいだ切り替えの作法はループBGMの納品形式でも触れています。

ゲーム1本でBGMが何曲必要かという全体の見積もりはゲーム1本にBGMは何曲必要かにまとめてあります。和風ホラーは他ジャンルより曲数が少なくて済むタイプなので、そちらの目安より控えめに考えて大丈夫です。

配布中の和風ホラーBGM9曲(試聴つき)

当サイトでは、和風ホラー向けのBGMを9曲、無料で配布しています。上の4段階に当てはめやすいよう、テンポの遅い順に並べました。曲名のリンク先が個別のダウンロードページです。

Ruined Japanese House / BPM50 / 2:05 / 探索

Ruined Japanese House のダウンロードページ →

Tatari / BPM51 / 2:41 / 探索・中核シーン

Tatari のダウンロードページ →

Japanese Castle Ruins / BPM54 / 1:18 / 探索・回想

Japanese Castle Ruins のダウンロードページ →

Ayakashi / BPM56 / 3:02 / 接近

Ayakashi のダウンロードページ →

Ayakashi (Ambient Version) / BPM56 / 3:02 / 接近・語りの下敷き

Ayakashi (Ambient Version) のダウンロードページ →

Mononoke / BPM71 / 2:25 / 接近

Mononoke のダウンロードページ →

Foggy Abandoned House / BPM80 / 2:09 / 接近・遭遇

Foggy Abandoned House のダウンロードページ →

Covered in Fog / BPM100 / 1:50 / 遭遇

Covered in Fog のダウンロードページ →

Oni / BPM140 / 1:50 / 逃走

Oni のダウンロードページ →

このページのプレイヤーは試聴用です。ダウンロード(MP3・ループ版の有無・利用規約の確認)は、各曲のダウンロードページからお進みください。ページによってはAudiostockでの高音質版の配信リンクも置いてあります。

9曲すべて商用利用OK、無料でお使いの場合はクレジット表記をお願いしています。ほかのジャンルの曲は著作権フリーBGMの一覧にまとめてあります。

メロディ版とアンビエント版を切り替える

上の9曲のうち、Ayakashiだけは通常版とアンビエント版の2つを用意しています。同じ曲からメロディを抜いたものがアンビエント版です。これは尺の都合ではなく、使い分けのために分けてあります。

メロディがある曲は、聴いていて印象に残ります。残るということは、何度も鳴らすと飽きられるということでもあります。探索のように同じ場所を行き来する場面では、メロディが邪魔になることが多い。そこでアンビエント版を敷いておき、イベントが動くタイミングでメロディ版に切り替えると、曲を増やさずに緊張度を動かせます。

もうひとつ、セリフや語りが乗る場面でも効きます。ナレーションの下でメロディが動くと、言葉と旋律がぶつかって、どちらも聞き取りづらくなる。怪談朗読やADVのテキスト送りでは、アンビエント版のほうが結果的に怖くなります。

切り替えの実装は、2トラックを同時に再生しておいて音量だけを入れ替えるのが手軽です。同じ曲から作られているので位相もテンポも揃っていて、フェードだけで自然につながります。曲を止めて別の曲を鳴らす方式より、はるかに滑らかです。

ループと尺、切り替えのタイミング

ホラーの探索BGMは、長く鳴らし続ける前提で選びます。1分の曲を10分の探索に使うと、10回同じところを通ることになる。プレイヤーは曲の構造を覚えてしまい、次に何が来るか予測できてしまいます。予測できる音は怖くありません。

目安として、探索に当てる曲は2分以上あると安心です。今回の9曲だと、Ayakashiの3分2秒、Tatariの2分41秒、Mononokeの2分25秒あたりが探索向きです。逆にJapanese Castle Ruinsは1分18秒と短いので、長い探索に敷き続けるより、特定の場所や回想シーンに当てるほうが向いています。

切り替えのタイミングは、演出上のきっかけと合わせすぎないほうがうまくいきます。ドアを開けた瞬間に曲が変わると、変わったこと自体が合図になって、プレイヤーは身構えます。数秒遅らせるか、逆にドアの手前で先に変えておくと、理由のわからない不安として残ります。

納品形式やループポイントの渡し方はループBGMの納品形式にまとめてあります。配布中の9曲はmp3のみですが、オリジナル制作ではwavでのループ納品にも対応しています。

フリー素材として使うときのルール

当サイトの素材は、個人・法人を問わず、商用・非商用のどちらでも無料で使えます。ただし条件がいくつかあるので、要点だけ表にしておきます。

項目可否条件・補足
商用利用OK個人・法人・同人・受託を問わない
クレジット表記原則お願いサイト名かURLが入っていれば形式は自由。FANBOXの商用利用フリープラン(月額500円)加入中はクレジット不要
加工・編集OKテンポ変更、切り貼り、ループ加工、エフェクト付加など
再配布・素材集への収録NGファイルそのものの配布・再アップロードは不可
素材自体が主役の動画NGBGM紹介動画、作業用BGMのまとめ動画など
Content ID等への登録NG自動検出システムへの登録は不可
AI学習データとしての利用NG機械学習・生成AIの学習用途は不可

詳しい条文は利用規約に書いてあります。なお、ここに書いたのは規約の要点をまとめたもので、法的助言ではありません。判断に迷う使い方がある場合は、お問い合わせから先に確認していただけると確実です。

著作権そのものは illmatic studio に帰属します。譲渡と使用許諾の違いについてはBGMの著作権、譲渡と使用許諾はどう違うのかで整理しているので、権利まわりが気になる場合はそちらもどうぞ。

よくある質問

和風ホラーゲーム1本にBGMは何曲必要ですか

短編なら4曲、中編で6〜8曲がひとつの目安です。探索・接近・遭遇・逃走に1曲ずつ、あとはタイトル画面とエンディングを足す形。ホラーは無音の時間が長いジャンルなので、他ジャンルより少ない曲数で成立します。ジャンル別の目安はゲーム1本にBGMは何曲必要かにまとめています。

配布中の9曲にループポイントは付いていますか

配布しているのはmp3の1ファイルのみで、ループポイントの情報は付いていません。ゲームエンジン側で頭に戻す使い方を想定しています。継ぎ目のないループが必要な場合は、オリジナル制作でループ用の書き出しに対応しています。

wav版はありますか

配布はmp3のみです。Japanese Castle Ruinsのみ44.1kHz、ほかの8曲は48kHzで書き出しています。ゲーム内でさらに加工を重ねる場合や、劣化を避けたい場合は、オリジナル制作でwav納品にも対応しています。納品形式の指定の仕方はBGM・効果音の発注仕様書の書き方にテンプレート付きでまとめています。

この9曲に合う効果音もありますか

足音のフリー素材を10点配布しています。コンクリートをヒールで歩く音なので、和風ホラーの屋外や廃墟のシーンには合わせやすいはずです。詳しくはヒールの足音SEを自然に鳴らす方法著作権フリー効果音をご覧ください。

まとめ

和風ホラーのBGMでやることは、そう多くありません。

  • 怖い音を足すのではなく、鳴っている音を減らす
  • 探索・接近・遭遇・逃走の4段階に分けて、1曲ずつ当てる
  • 隣り合う段階は、テンポより音数と音域で差をつける
  • 探索に使う曲は2分以上のものを選ぶ
  • 切り替えは演出のきっかけと少しずらす

配布している9曲は、この4段階にそのまま当てはめられる形で並べてあります。まずは探索に1曲、逃走に1曲を置いてみてください。それだけでも、ゲームの体感はかなり変わるはずです。

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ゲーム音楽15年・ゲーム会社所属11年目のクリエイターが、作曲からミックス・マスタリング、ループ加工、納品形式の書き出しまで一貫して対応します。BGMは30秒20,000円〜(税抜)、効果音は1点2,000円〜。お見積もり・ご相談は無料、2営業日以内にご返信します。

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