ゲームやアプリのBGMを外注するとき、見積もりの金額と同じくらい重要なのが権利をどう扱うかです。「譲渡」と「使用許諾(ライセンス)」は似ているようで、後からできることが大きく変わります。ここを曖昧にしたまま進めると、続編を作るとき、サントラを出すとき、動画広告に転用するときに必ず引っかかります。
この記事では、ゲーム開発者・発注者の立場から、譲渡と許諾の違い、どちらを選ぶべきか、発注前に決めておく項目を整理します。ゲーム会社で15年、クライアントワークを続けてきた実務の感覚も交えて書きます。
先に結論だけ。ゲーム内で使うだけなら使用許諾で足りることが多く、サントラ販売・グッズ・続編での流用まで考えているなら譲渡(または相当に広い許諾)が必要です。
なぜ発注前に決めておく必要があるのか
権利の扱いは、価格そのものに直結します。譲渡は買い取りに近くなるため、同じ曲でも許諾より高くなるのが一般的です。つまり「あとで決めましょう」にすると、見積もりが確定しません。
さらに厄介なのが、納品後に条件を変えようとしたときです。すでに納品・支払いが済んだ曲について、後から「やっぱり譲渡してほしい」と交渉すると、追加費用の話になりますし、クリエイター側がすでに同じ曲をストック配信していれば、そもそも譲渡できないこともあります。順番として、権利の話は必ず見積もりの前です。
著作権の「譲渡」とは
著作権(財産権としての権利)そのものが、クリエイターから発注者に移ることです。譲渡が成立すれば、発注者は権利者として、複製・配信・改変・二次利用を自分の判断で行えるようになります。ゲーム本編以外にサントラを出したり、PVに使ったり、続編で使い回したりする自由度が高くなります。
ただし、日本の著作権法には発注者が知っておくべき決まりが2つあります。
① 著作者人格権は譲渡できない
公表権・氏名表示権・同一性保持権といった「著作者人格権」は、法律上、著作者本人から切り離せません。そのため実務では、契約書に「著作者人格権を行使しない」という条項(不行使特約)を入れて、改変やクレジット省略ができるようにしておくのが通例です。ここが抜けていると、譲渡したはずなのに改変で揉める、ということが起こり得ます。
② 「改変して使う権利」は明記しないと移らない
著作権法では、翻案権など一部の権利について、契約書に特に明記していないと譲渡されなかったものと推定されるという扱いになっています。「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約書だと、アレンジ違いを作る・尺を切る・別ジャンルにリメイクするといった行為が、譲渡の範囲に入っていないと解釈される余地が残ります。契約書に権利の範囲を具体的に書いてもらうのが安全です。
※ここは一般的な考え方の説明であり、法的助言ではありません。金額が大きい案件や、IPとして長く運用する予定がある場合は、契約書を弁護士に確認してもらってください。
「使用許諾(ライセンス)」とは
著作権はクリエイター側に残したまま、発注者が決められた範囲で使えるようにする形です。権利が移らないぶん、譲渡より価格を抑えられるのが利点です。
許諾の場合、次の項目で「どこまで使えるか」が決まります。見積書や発注書にこれが書かれているか確認してください。
- 利用範囲(媒体):ゲーム本編のみか、PV・SNS・配信・展示会でも使えるか
- 期間:買い切りか、年単位の更新か
- 地域:国内のみか、海外展開も含むか
- 独占/非独占:同じ曲を他社に提供されることがあるか
- 改変の可否:尺を切る、ループ位置を変える、他のアレンジを作ることが許されるか
- 再許諾(サブライセンス):パブリッシャーや配信プラットフォームに使わせられるか
特に見落としやすいのが独占/非独占です。非独占だと、同じ曲が他のゲームで流れる可能性が理屈のうえでは残ります。オリジナル書き下ろしであれば実際にはあまり起きませんが、タイトルの看板曲にするなら独占または譲渡にしておくべきです。
どちらを選ぶべきか(ケース別)
譲渡にしたほうがいいケース
- サウンドトラックの販売や、音源単体での配信を予定している
- グッズ、アニメ化、コラボなど、ゲーム以外への展開の可能性がある
- 続編・移植版・リマスターで同じ曲を使い回す前提がある
- 会社の主要IPで、将来の権利関係を単純にしておきたい
- 出資者やパブリッシャーから、権利の一元化を求められている
使用許諾で足りるケース
- 個人制作・同人ゲームで、ゲーム内での再生が主な用途
- まずリリースを優先したい、予算を抑えたい
- ジャム作品や体験版など、期間限定・小規模な公開
- 曲数が多く、全曲を譲渡にすると予算が合わない(看板曲だけ譲渡、という組み合わせも可能)
全曲を一律で決める必要はありません。タイトル曲とボス曲だけ譲渡、その他は許諾のように配分すれば、予算と自由度のバランスを取れます。
発注前に決めておきたい5項目
- 譲渡か許諾か(曲ごとに変えるならその内訳)
- 使う媒体:ゲーム本編/PV/SNS/配信/サントラ/展示会
- 改変の可否:尺の編集、ループ加工、アレンジ違いの作成
- 独占か非独占か
- クレジット表記:表記するか、どう書くか(氏名表示権に関わります)
この5点をメモにして渡すだけで、見積もりの往復が1〜2回減ります。まだ決まっていない項目があれば「未定」と書いて構いません。制作側から選択肢を提示できます。
よくある誤解
「お金を払ったのだから著作権は自分のもの」
制作費を支払っても、契約に譲渡の定めがなければ著作権はクリエイター側に残ります。委託して作らせた曲でも同じです。書面で明記されているかを確認してください。
「著作権フリー=著作権が存在しない」
一般に「著作権フリー」と呼ばれている素材のほとんどは、権利が消えているわけではなく、決められた条件の範囲内で使ってよいという利用許諾です。クレジット表記の要否、商用利用の可否、再配布の禁止など、必ず規約があります。
「オリジナル曲だから配信で権利侵害の警告は来ない」
書き下ろしのオリジナル曲であれば通常は問題になりませんが、実況配信や動画投稿を想定しているなら、その用途が許諾範囲に入っているかを事前に確認しておくと安心です。配信者向けにガイドラインを出すゲームも増えています。
当スタジオの場合
illmatic studio では、著作権の譲渡に対応しています。ご希望の場合は見積もりの段階でお申し付けください。ゲーム内利用のみであれば使用許諾でのご提供も可能で、そのぶん費用を抑えられます。
料金は30秒のBGMで20,000円〜(税抜)、効果音は1点2,000円〜。軽微な修正は2回まで無料です。費用の内訳や相場についてはゲームBGMの制作依頼、費用はいくら?で詳しく書いています。納品形式やループの渡し方についてはループBGMの納品形式にまとめました。
まとめ
- 譲渡は著作権そのものが移る。サントラ・グッズ・続編流用まで見据えるならこちら
- 譲渡でも著作者人格権は移らないため、不行使特約と改変の範囲を契約書に明記してもらう
- 許諾は権利がクリエイター側に残る形。媒体・期間・地域・独占の有無・改変の可否で範囲が決まる
- 全曲一律にせず、看板曲だけ譲渡という配分もできる
- 権利の話は納品後ではなく、必ず見積もりの前に決める
権利の条件は、そのまま見積金額に反映されます。逆に言えば、こちらの用途をはっきり伝えられれば、必要な範囲だけを買って無駄なコストを払わずに済みます。
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ゲームBGM・効果音の制作を承っています
ゲーム音楽15年・ゲーム会社所属11年目のクリエイターが、作曲からミックス・マスタリング、ループ加工まで一貫して対応します。著作権の譲渡にも対応。BGMは30秒20,000円〜(税抜)、効果音は1点2,000円〜。お見積もり・ご相談は無料、2営業日以内にご返信します。













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